UKコメディドラマ『ピープ・ショー ボクたち妄想族/Peep Show』まとめ
【作品名】ピープ・ショー ボクたち妄想族(原題:Peep Show)
作品概要
シェアハウス中のサラリーマンのマークとフリーターのジェレミーは性格も生き方もバラバラ。親友であれど、女性のこととなるとお互い我が強くなり喧嘩が絶えません。その微妙な距離感が彼らの冴えない日常にプチトラブルを起こし、シュールな面白さを生み出しています。マークは世間体を気にして良いことや良い行動を心がけますが、実は毒舌で変人。ジェレミーはクールぶっていますが、ものすごくおバカ。このドラマは、2人の視点の映像や2人の心の声が聞こえるような構成になっているので、彼らの下心や本音、取り繕うと焦る心の内などがダダ漏れです。またやってるよこの人たち…と思いながらもダラダラと観てしまう傑作コメディドラマ。日本ではNetflixで配信されていましたが再配信は未定。
あらすじ
恋人に追い出されてしまった怠け者のジェレミーが、友人マークと同居することに。このふたり、世渡りの仕方は対照的でも、地に足が着いてない所はソックリ。
Netflixより引用
作品のテイスト
なんだかんだヤルことばかり考えているマークとジェレミー。奇妙なベッドシーンも多いことから、下ネタ指数は高め。とは言え、最終的に手に入れたいのは愛する人のようですし、マークとジェレミーの“喧嘩するほど仲が良い”ブロマンスっぷりも考慮し、恋愛指数を最高点にしています。あと、大爆笑というよりも、じわじわくる笑いをぶっ込んでくるタイプのコメディです。
登場人物
マーク・コリガン
(デヴィッド・ミッチェル/David Mitchell)
主人公。カード会社で働くしがないサラリーマンで、歴史マニア。近所の子どもたちにバカにされている。女性へのアプローチが下手くそで、それ故に奇妙な挙動をしてしまう。ジェレミーとシェアハウスをしているが、家賃や生活費を払ってもらえず困っている。
ジェレミー・アスボーン[ジェズ]
(ロバート・ウェッブ/Robert Webb)
主人公。自称ミュージシャン。スーパー・ハンスとバンドを組んでいる。ビック・スーズと別れたことをきっかけにマークのフラットに転がり込む。だらしがなく、部屋を散らかして家賃や生活費を踏み倒す。でも根はいい奴。
ソフィー・チャンプマン
(オリヴィア・コールマン/Olivia Colman)
マークの同僚。マークから好意を寄せられていることに薄々気づきながら、他の同僚ジェフにも気があるそぶりをするビッチ。
スーパー・ハンス
(マット・キング/Matt King)
ジェレミーのバンドメンバーであり悪友。ジェレミー以上にだらしないドラッグ漬けの男だが、仕事に対する姿勢は誰よりも真面目。
トニ
(エリザベス・マーマー/Elizabeth Marmur)
マークとジェレミーの隣人。夫との喧嘩で放火したり、ジェレミーをマルチ商法に誘ったりと、なかなか激しい性格の女性。
ジェフ・ヘンリー
(ニール・フィッツマライス/Neil Fitzmaurice)
マークとソフィーの同僚で、マークの恋敵。マークのことを何かと見下している。
アラン・ジョンソン
(パターソン・ヨセフ/Paterson Joseph)
マークが憧れるロンダリングマネージャー。仕事一筋で、ビジネス関連の話が大好き。
ビッグ・スーズ
(ソフィー・ウィンクルマン/Sophie Winkleman)
ジェレミーの元カノ。グラマーで美しいが、やや高飛車でワガママ。
ドビー
(イジー・スーティー/Isy Suttie)
マークの職場に現れたギークな女性。男女分け隔てなく仲良くなれるタイプ。
ジェラルド・マシュー
(ジム・ホーウィック/Jim Howick)
マークの職場にいる、病弱な男性。後にマークと恋敵になる。
サラ・コーリガン
(エリザ・L・ベネット/Eliza L. Benette)
マークの妹で、ジェレミーと体の関係になりがち。
撮影地
シーズン1では、しばしばロンドンのクロイドン区で撮影が行われた。理由は、路面電車好きである監督ジェレミー・ウーディングがその近辺に住んでいたから。物語の主な舞台であるマークとジェレミーのフラットは、シーズン1・2ではクロイドン区にある「ゾディアック・コート」のフラットを使用。建物の名前は番組内で「アポロ・ハウス」と名前を変えている。しかし、フラットのオーナーから使用料を吊りあげられたため、シーズン3、4ではロンドンのブレント区ニースデンにある元カーペット倉庫にてフラット内を複製したセットを組んで撮影。シーズン5、6は、ロンドン北部ミル・ヒルにある軍の兵舎、シーズン7はロンドン南西部マートンのスタジオで撮影が行われた。
オープニングテーマ
ダニエル・ペンバートン(Daniel Pemberton)- “Pip Pop Plop”(Season1)
ハーヴィー・デンジャー(Harvey Danger)- “Flagpole Sitta”(Season2–9)
作品にまつわるエピソードあれこれ
- 原案・脚本のジェシー・アームストロングとサム・ベインがBBC向けのシットコム製作を断念した時期、俳優/脚本家コンビのデヴィッド・ミッチェルとロバート・ウェッブに出会う。彼らはいつか実現させたいと思っていた『All Day Breakfast』の脚本があり、2人に助けを求めた。その番組はうまくいかなかったが、4人は良好な関係を築くことができ、そこから1つのアイデアが生まれ、『Peep Show』へと発展した。
- 『Peep Show』はもともと、アニメ『ビーバス&バッドヘッド』のように、テレビを見て話し合う2人のキャラクターを中心に展開するコメディ番組として構想を練っていた。しかし、番組内で他番組の映像を使用すると多額の費用がかかること、また、ただテレビを観ているだけだとミッチェル&ウェッブが画面上に出てこない恐れがあったことから、このアイデアはボツになった。
- 番組内の映像は、俳優の頭や帽子に取り付けたカメラを使い撮影することで、視聴者に主人公たちと同じ視点を与えている(主観ショット/Point Of View)。頭部にカメラを設置しない場合は、俳優の肩越しか、顔の真正面にカメラをかざして撮影した。そのため、異なる角度で複数回撮影が行われることもよくあった。この技法は、映画『マルコヴィッチの穴』(99年)の技法を真似たChannel4のドキュメンタリー『Being Caprice』(00年)からヒントを得た。ナレーションを使うアイデアは、キャラクターの本心が字幕で伝えられる映画『アニーホール』(77年)から。ベインは「だから、(『マルコヴィッチの穴』から)間接的に技法を盗んだんだ。(『アニーホール』を真似たのは、)誰かの考えを聞けることが、コメディにぴったりだと思ったんだ。その声は、笑いどころに別の側面を与えてくれる」と明かしている。しかし、POV映像には質が悪いものもあったので、徐々にその技法は使われなくなった。
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アメコミ『Hate』、ドラマ『となりのサインフェルド』にも影響を受けた。ベインは「おそらく、マーク・コリガンには(『となりのサインフェルド』の)ジョージ・コスタンザのDNAがほんの少しだけ入っている」とコメントしている。
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POVの手法を活用していることから、もともと『POV』という題名だったが、「戦略的な感じがするから」と放送前に変更となった。ベインは「コミックを元に一種のあだ名をつけたんだ。そのコミックの原作者と話したけど…大丈夫だったよ。訴えられないだろう」と語っている。なお、ミッチェルは『Peep Show』という名前に変わると聞いた時、恐怖を感じたとか。
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製作陣一同、人々が『Peep Show』を『The Peep Show』とタイトルを誤ることに対して快く思っていない。ミッチェルは「それだと、本物の“いかがわしい見世物(Peep Show)”についてのシットコムのように聞こえる」とコメント。最初のスポンサー『Kenco』は間違って「The 」を入れていたらしい。
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2本製作されたというパイロット版では、オリヴィア・コールマン演じるソフィー・チャップマンの心の声も吹き込まれていた。しかし、「奇妙に感じた」からカットすることになった。ちなみに、パイロット版の製作により、コールマンは友人の結婚式に出席しそびれた。
- 奇抜でドラッグ漬けのスーパー・ハンスのキャラクター像は、『Wizuneiru to Boku』(87年)のダニーというキャラクターから着想を得ている。(2人の主人公よりもキテレツな人物という点においても)
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スーパー・ハンスはダニー・ダイアを想定して書かれた。
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まだ知名度が低かったラッセル・ブランドもスーパー・ハンス役のオーディションを受けており、ミッチェルは「彼で決まりそうだったよ。でも、(有名になった)今じゃ手一杯だろうな」と振り返っている。ジェイク・ウッドも最終候補の3人に選ばれていた。
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オーストラリア出身のマット・キングは、「Edinburgh Festival」でスタンダップコメディのパフォーマンスをしていたところをキャスティングディレクターに発掘され、スーパー・ハンスのオーディションに参加することになった。
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ベインとアームストロングは、「女性のオタクキャラ」に挑戦したいと考え、グラフィックノベル『ゴーストワールド』のキャラクター、イーニドをインスピレーション源にドビーを生み出した。そんなドビー演じるイジー・サティーの撮影初日は、文具棚のある個室でマークを誘惑するシーンだったという。
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ビッグ・スーズを演じた女優ソフィー・ウィンクルマンは、レディ・フレデリック・ウィンザーとしても知られるロイヤル・ファミリーの一員。夫は、エリザベス女王2世の従兄弟マイケル・オブ・ケント王子の息子。
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原案・脚本のベイン&アームストロングはマンチェスター大学の同級生で、主演のミッチェル&ウェッブはケンブリッジ大学の同級生。その背景はマークとジェレミーがダートマスの大学に通っていた同級生であるという設定に似ている。ちなみに、ミッチェルとウェッブはお互いに結婚式の付添人を務めるほど私生活でも仲が良い。
- 脚本は、ベインとアームストロングが主に書き、ミッチェルとウェッブが追記して完成させている。各シーズンの製作開始前には毎回、ミッチェルとウェッブの意見を脚本に取り入れるために「plot party」が開催された。多くの物語が彼ら4人、特にベインの経験から生み出されている。例えば、シーズン5の『踏んだり蹴ったり(原題: Burgling)』で、マークが強盗の上に馬乗りになって捕らえているが、それは、ベインが以前働いていたビデオショップで実際に行ってお客さんに怖がられた実体験からきている。また、シーズン1の『復讐ごっこ(原題:Dream Job)』にて、マークが昇進できなかった腹いせとして上司であるバーバラのデスクの引き出しに放尿するシーンがあるが、ミッチェルは実際、クレジット管理会社のデスクの引き出しに放尿した経験があることで知られている。
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家電量販店のアナログテレビが印象的なオープニング映像は、ロンドンのハリンゲイ区クラウチ・エンドにて撮影が行われたが、HDテレビが並ぶ映像への切替に伴い、シーズン6からは主人公たちが実際に住んでいるクロイドン区で撮り直された。
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シリーズを通し、マークは大型の最新テレビを愛用しているが、演じるミッチェルは真逆。2009年に彼の自宅で行われた『Guradian』のインタビューでは、まだ文字多重放送が見られるような時代遅れの旧型モデルのテレビを使っていると明かした。理由は「まだ使える」し、「変化、怠惰、仕事への恐れ」から。家もテレビも新しくしないことに対し、ある種の誇りを持っていると語っていた。
- 『Peep Show』はChannel 4で最も長く続いたテレビドラマである。ご長寿番組だったことで製作陣は過去の細かい内容を忘れることもあり、ジェレミーは2回もクラミジアにかかっている。
- シーズンごとにロゴの色が異なる。
- シーズン1の撮影の最初の3日分は、再撮が必要になった。なぜなら、録音部が一切録音をしなかったから。
- シーズン1エピソード3のボウリング場のシーンにて、後にテーマ曲となるハーヴィー・デンジャーの楽曲“Flagpole Sitta”が流れている。
- シーズン4『休日はワイルドに(原題:Holiday)』でジェレミーが食べた犬の脚は、実際にはターキーレッグである。
- ジェレミーとスーパー・ハンスは「The Hair Blair Bunch」「Spunk Bubble」「Momma's Kumquat」「Coming Up For Blair」「Various Artists」「Curse These Metal Hands」といった調子で、バンド名をコロコロと変えている。2人は「Man Feelings」というバンドに加入するが、ジェレミーはその名を「Danny Dyer's Chocolate Homunculus」に変えようとする。2人はバンド解散時に自分たちのバンド名を忘れており、ジェレミーは「13 Bastards」だっだと予想している。
- ジェレミー愛用のミリタリージャケットは米軍のデザイン。
- シーズン9の撮影最終日、全員が記念として撮影小道具を持って帰った。ミッチェルはマークの寝室にあったベントレーの写真、ウェッブはジェレミーのポエム練習帳を選んだ。
- 2008年、Spike TVが独自版『Peep Show』製作を試みたことがある。最初はロバート・ウェイド監督・脚本という話になっていたが、結局はアームストロングとベインに依頼が渡った。しかし実現されることはなかった。
- シーズン1〜5のすべてのエピソードの脚本と、ミッチェル&ウェッブについてまとめた本『Peep Show:The Scripts and More』が2008年に刊行された。
- 2010年のクリスマスイブ、Channel 4が番組を祝して特番『Peep Show Night』を放送。ドキュメンタリー『Peep Show and Tell』と、ファンが選んだエピソード『シーズン2 エピソード6. 結婚できないオトナたち(原題:Wedding)』と『シーズン3 エピソード3. 天国へのトビラ(原題:Shrooming)』が放送された。
- 批評家から絶賛され、カルト番組と称されている。初期のプレビューでは「カルトファンがつくであろう有望な作品」と言われていた。『Mirror』のジェーン・サイモンは、今後同番組が「コメディの頂点となることは明らかだ」と主張。『Guardian』は「10年で最高のコメディ」と表現している。『Times』は「痛烈極まりない脚本だ」と賞賛し、2000年代で15番目に優れたテレビ番組とランク付けた。2019年、『Radio Times』の投票で史上13位のUKのホームコメディドラマに選ばれた。同年に、『Guardian』は21世紀のベスト100テレビ番組のリストで9位にランク付けした。
- リッキー・ジャーヴェイスは、「最近UKのテレビ番組で最も興奮したのは『Peep Show』で、『テッド神父』以来最高のシットコムだと思った」と発言している。 2005年の「British Comedy Awards」で賞を贈った時には、「現在最高のテレビ番組」と表現し、「もし受賞しなかったら(アワードは)大失敗だった」と述べた。
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批評家から称賛されていたにも関わらず、放送時の視聴率は軒並み悪かった。2006年の初めには、低視聴率・低評価が原因でシーズン4が作られないという噂もあった。しかし、前シリーズのDVDの収益が多かったため、継続決定。シーズン4の初回放送は、前シーズンと同じく低視聴率・低評価だったが、シーズン5も作られた。Channel 4の決断は、DVDの売り上げが好調であること、番組が常にハイクオリティな内容であること、Appleの広告『Look』や映画『Magicians』によってミッチェル&ウェッブが注目を集めていることなど、様々な理由があったと言われている。それでも、シーズン5の状況は変わらなかった。プロデューサーのアンドリュー・オコナーは、低評価の理由の1つが、番組のヒットで大衆受けに狙いを定めたことでPOVをやめてしまったことが原因だと述べており、ベインとアームストロングもその旨を認めている。
エピソード名
シーズン1
1.スターリングラード大作戦(原題:Warring Factions)
2. 恋の“余計な”ひとこと(原題:The Interview)
3. オリーブオイル・ダンディ(原題:On the Pull)
4. 検証!ゲイ疑惑(原題:Mark Makes a Friend)
5. 復讐ごっこ(原題:Dream Job)
6. 嗚呼!お葬式(原題:Funeral)
シーズン2
1. タブーを打ち破れ!(原題:Dance Class)
2. 新しいトモダチ(原題:Jeremy Makes It)
3. 嫉妬の炎(原題:Local Zero)
4. 新たなる恋の始まり?(原題:University Challenge)
5. 今そこにある地獄(原題:The Man Show)
6. 結婚できないオトナたち(原題:Wedding)
シーズン3
1. ボクたち、今が正念場(原題:Mugging)
2. 悲願達成!?(原題:Sectioning)
3. 天国へのトビラ(原題:Shrooming)
4. 恋のオキテ、破ります(原題:Sistering)
5. 裁きを下す時(原題:Jurying)
6. シアワセの分かれ道(原題:Quantocking)
シーズン4
1. 第一印象が肝心(原題:Sophie's Parents)
2. 会議のプレッシャー(原題:Conference)
3. スポーツジムで悪だくみ(原題:Gym)
4. 手先は器用(原題:Handyman)
5. 休日はワイルドに(原題:Holiday)
6. 結婚、それは人生の墓場(原題:Wedding)
シーズン5
1. 踏んだり蹴ったり(原題: Burgling)
2. 果てしない空回り(原題:Spin War)
3. 画期的金欠解除法(原題: Jeremy's Broke)
4. ママが恋しい(原題: Jeremy's Mummy)
5. 敏腕美人マネージャー(原題: Jeremy's Manager)
6. マークの女運(原題:Mark's Women)
シーズン6
1. 俺流オフィスワーク(原題:Jeremy at JLB)
2. 父親は誰だ(原題: The Test)
3. ジェレミー、恋の病(原題: Jeremy in Love)
4. どっちを取るか(原題:The Affair)
5. 裏目のパーティー(原題:The Party)
6. 煮え切らない男達(原題:Das Boot)
シーズン7
1. 病院ではお静かに(原題:St Hospitals)
2. 身から出た錆(原題:Man Jam)
3. ビューティフル・マインド(原題:A Beautiful Mind)
4. まるで地獄のよう(原題:Nether Zone)
5. メリー・クリスマーク(原題:Seasonal Beatings)
6. 大晦日の夜に(原題:New Year's Eve)
シーズン8
1. セラピーの虜(原題:Jeremy Therapised)
2. ファラオのトップシークレット(原題:Business Secrets of the Pharaohs)
3. 恋の戦線は泥沼模様(原題:The Love Bunker)
4. ビッグ・マッド・アンディ(原題: Big Mad Andy)
5. マークに清き一票を(原題:Chairman Mark)
6. またもやシアワセの分かれ道(原題:Quantocking II)
シーズン9
1. 原題:The William Morris Years
2. 原題:Gregory's Beard
3. 原題:Threeism
4. 原題:Mole-Mapping
5. 原題: Kid Farm
6. 原題:Are We Going to Be Alright?
参考サイト:Netflix / Wikipedia / IMDB / BRITISH COMEDY GUIDE / BUZZFEED